いうものを多様な形でとらえていただきたいと思います。
もう一つは海そのものに対する理解を深めていただきたい。例えば地球の表面は七〇%が水だ、水はたくさんあるのだよという話がありますが、私はそうは思いません。今、直径一・二メートルの地球を考えてみますと、一番深い太平洋の平均深度が四千メートルですから、太平洋の深さというものは、〇・四ミリなんですね。日本海は平均深度二百メートルですから〇・〇二ミリで、水というのはものすごい貴重な環境財です。これは海水も含めてです。そのうちに人間が直接役立てる真水は全体の水の三パーセントですから、いかに貴重な資源かということを含めて、あるいはなぜ地球はいつもも温暖でいられるのかといえば、これは海のおかげです。
太陽の熱で海水が蒸発し、それを宇宙に投げ捨て、冷たくなった雨として地上に返ってくれる。そのおかげで、地球は気持ちのよい惑星としてある。海のメカニズムが壊れたときに私たちの命も文明も全部壊れてしまう。そういう海との多角的なつき合いを持つ、それが海の文化だろうと考えます。遊んだり埋め立てたり、船で走ったりすることだけが海とのつき合いではないのです。そのへんをぜひ強調しておきたいと思います。

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海の安全・安心
吉村 海というのは、みなさんのお話にありましたように、当然ではありますが、私たち一人ひとりの公共の財産であるという考え方からすれば、海の環境を保全して、海の安全・安心をどのように守っていくか、ということが大事になるわけで、海の安全ということについて考えてみたいと思います。次の映像をご覧ください。
−映像−
吉村 いま浦賀水道の話がありましたが、あの場所では数々の海難事故が発生しております。新谷さんにとりましては、海の安全航行は死活問題になるわけですが、国民生活とのかかわりも含めて、話をしていただけませんか。
新谷 そうですね。商船で大きな事故が発生した場合、事故の内容によっては船会社にとって、まさに死活問題となる可能性は十分にございます。それだけに事故防止が大切なわけです。先程のVTRにありました浦賀水道もそうですが、日本の沿岸、特に東京湾・伊勢湾・大阪湾あるいは瀬戸内海などは、世界でも有数の船舶交通の混雑する海域でございます。
これらの海域では、各地の海上交通センターを通して、海上保安庁による航路管制など、航行安全のためのさまざまな業務が展開されておりまして、航行安全体制が整備されています。先程の航行管制に加えて、私どもは、大型タンカーの通航時には、タグボートを配備して、進路の警戒業務をさせるとともに、消防船も待機させるという、万全の安全対策を講じており、幸いにして、最近では大きな事故は発生しておりません。
一方、船舶交通の混雑する海域としてはご存じのように、マラッカ・シンガポール海峡がございます。この海峡はインド洋と太平洋を結ぶ重要な国際海峡で、ございますが、大型のタンカーやコンテナ船などの通航が非常に多く、しかも潮流が早く浅瀬も多い、いわゆる船舶交通の難所でございます。このため、わが国からも事故防止のための航路標識の設置や水路調査などの援助が行われており、日本船主協会を含め各船会社も資金分担をして、安全の確保に寄与し

 

 

 

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